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ぞうブロ~ぞうべいのたわごと

妄想を武器に現実と闘う、不惑のエンジニアのブログ

りっちゃんの思い出 前編 〜どれだけ涙を流せば〜

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この前、中学高校時代に好きだった女の子と再会し、デートしてる夢を見た。楽しく幸せな夢だった。同時に、夢とは違った現実の思い出も蘇ってきた…

 

中学時代、僕はクラスメイトのりっちゃん(仮)に、ひそかに片想いをしていた。

りっちゃんは、小柄で、運動神経がとても良かった。健康的な小麦肌。とびきり可愛い笑顔とエクボ。おまけに巨乳。当然、女子だけでなく、男子からも人気があった。

僕とりっちゃんの接点は、ほとんどなかった。たまに話す機会があっても、緊張して顔が真っ赤になって話せなかった。授業中目に入るりっちゃんの横顔、勉強中に湧き上がるりっちゃんの妄想は、思春期の僕をしばしば悶絶させた。

 

あれは中3の夏休みだった。僕はクラスメイトの友人に、好きな子はいるかと聞かれ、りっちゃんのことが好きかもと打ち明けた。僕とは違って陽キャの友人は、目を輝かせて言った。

「おお、まじか!りっちゃん、可愛いもんな!なら今度の夏祭りに、りっちゃんを誘ってみたら?」

友人はそう僕の背中を押してくれた。

いきなりそんなん無理や、二人じゃ緊張して話せないよ。そうモジっていると、

「大丈夫!俺も一緒に行くよ!りっちゃんの女友達も誘ってさ!2対2のダブルデートなら、りっちゃんも来てくれるっしょ!」

そんな心強い言葉が帰ってきた。これ以上ない援軍。その時は、友人が神様に見えた。

友人は、最後にこう念を押した。

「早く言わないと、誰かに取られてしまうよ!」

 

数日後、夏休みに入ったある夜。

僕はありったけの勇気を振り絞り、りっちゃん家に電話した。スマホなんてない時代。連絡網の電話番号を確認し、オカンにバレないよう息を潜め、震える手で家の黒電話のダイヤルを回す。無限にも感じるプルルル…の電子音。

彼女のお姉さん?が出て、繋いでくれた。りっちゃんは少しびっくりした様子だった。けど、友人達とのダブルデートの予定です、一緒にお祭り行きませんかと話すと、彼女は「いいよっ」と明るく快諾してくれた。

人生初のデートのお誘いに成功。僕は、布団にダイブし、枕に顔を埋めて小躍りした。盛り上がれば、最後に告白しようかな。うまくいけば、手とか繋げちゃったりするのかも。妄想とニヤニヤが止まらなかった。

 

迎えた当日。飛び込んできたのは、頼みの友人からのドタキャンの連絡。りっちゃんは、それでも来てくれるという。幸か不幸か、僕は彼女と二人きりでデートすることになった。今なら、チャンス到来と張り切るだろう。だけど当時の僕は、あまりにも無力だった。

友人が来ない以上、とにかく頑張らないといけない。ありったけのジェルを塗りたくり、図鑑で見たウニの如くツンツンにヘアセットして気合注入。大好きなX JAPANのRusty Nailを聴いてテンションを上げ、小走りで待ち合わせ場所の駅に向かった。

「雨が降るかもしれんから、傘持って行きよ」そんなオカンの声は、浮かれた僕には届かなかった。

 

駅に着き、緊張していると、程なくりっちゃんがやってきた。改札から出てきたりっちゃんは、まさかの浴衣姿だった。僕に気づくと、手を振ってくれた。

人混みの中でも一瞬で判別できる圧倒的な輝き。いつもにも増して眩しい笑顔。艶かしいうなじのライン。浴衣でも隠しきれない胸の膨らみ。

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「橋本梨菜」編 在宅で可愛いグラビアをひたすら見て癒されよう!のコーナーvol.16α | 今日も電波良好! (ameblo.jp)

(りっちゃん=橋本梨奈さんではありません、念のため。でもイメージは近いです)

可愛い、あまりにも可愛すぎる。目の前に降臨した天使を見て、僕の心臓は瞬時に250BPMを刻み、低スペックの脳みそは即オーバーフロー。

ただのボンクラウニと化した僕は、あまりの緊張で話が続かない。お祭り会場に向かう途中、無言が続く。

どうした、何でもいい、話せ。今、一生分話せ。喋らないと、命を取られると思え。

そう必死で自分を鼓舞するも、言葉が紡げない。全然盛り上がらない。

 

会場に到着し、花火が始まった。これで仕切り直せる。花火を見上げ無邪気に喜ぶりっちゃん。僕は花火には目もくれず、花火を見るふりをして、りっちゃんの横顔をチラ見していた。

しかし間も無く、無情にも雨が降り出した。オカンと気象予報士の悪魔じみた予言は、いみじくも的中した。せっかくの花火は途中で終了。傘を持ってなかった僕達はずぶ濡れに。

浴衣が濡れてしまい、色っぽくも困惑した表情のりっちゃん。僕の自慢のウニ髪もベタベタで、まるで岸壁に打ち上げられたワカメのよう。僕の心の中を映し出したような無残な姿。

手を繋ぐどころか、一切の盛り上がりを見せぬまま、予定よりはるかに早く、僕はりっちゃんを駅に送り届けた。髪も心も折れてしまった僕には、もはや言葉すら忘れた乙事主のように、ただ黙ってりっちゃんを見送った。

 

家に帰りたくなかった。誰もいないところに行きたかった。雨に打たれながら、ついさっき、ウキウキで聴いていたRusty Nailが、脳裏で虚しくループした。

どれだけ涙を流せば 貴方を忘れられるだろう

Just tell me my life  何処まで歩いてみても

涙で明日が見えない

でも実際は情けなすぎて、涙も出なかった。

 

「どうやった?」

悪魔の勘でニヤニヤ聞くオカンを払い除けた僕は、身体を拭くこともなく、そのまま自室の布団に突っ伏した。

ごめんよ、りっちゃん。僕は呟いた。外の土砂降りが、僕の代わりに泣いてくれてる涙雨に思えた。

 

涙雨の中で、僕は悟った。

欲しいものを得たいときには、自分の力で頑張らないといけないことを。決して他人に甘えてはいけないことを。

 

真夏の惨劇が終わった、夏休み明け初日。あれからりっちゃんとは話していない。彼女の姿を見るだけで、胸がかき乱される。

例の友人が、ウキウキで聞いてきた。

「この前はごめんなっ!ところで、どうやった?もう、手繋いだ?」

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手越祐也、ヒカルと焼き肉男子会の2ショット「肌ツヤツヤだしほっぺが赤くて可愛い」「2人ともカッコイイ」 : スポーツ報知 (hochi.news)

(写真はイメージです)

友人と話すのは、あの日以来だった。僕は無言で、首を横に振った。

「悪かった…」さすがに神妙な顔で謝る友人。

謝らないでおくれ。余計惨めになる。全ては自分の力不足。むしろ謝りたいのは僕だった。

しかしそれは、更なる悲劇の序章に過ぎなかった…

 

キャスト(敬称略)

りっちゃん 橋本梨菜

友人    手越祐也

オカン   和田アキ子

僕     富澤たけし

主題歌

Rusty Nail (X JAPAN)

読んで下さりありがとうございます。

りっちゃん、友人、僕が織りなす青春噴飯ストーリー。一体どんな結末が…!?

後編です↓

りっちゃんの思い出 後編 〜僕らは愛の花咲かそうよ〜 - ぞうブロ~ぞうべいのたわごと (elep-peace.com)