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ぞうブロ~ぞうべいのたわごと

妄想を武器に現実と闘う、不惑のエンジニアのブログ

りっちゃんの思い出 後編 〜僕らは愛の花咲かそうよ〜

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前編↓

www.elep-peace.com

あの惨劇から2年。僕達は高校生になっていた。

文系のりっちゃんとはクラスが分かれたが、例の友人とは、理系クラスに加え数学の塾も同じになった。それに二人とも、相変わらずりっちゃんのファンだった。

「りっちゃんを誘って、夏祭り行かね?」

高二の夏、友人が言ってきた。

耳を疑った。正気か。しかし2年という年月は、あの惨劇をすっかり風化させていた。今なら笑い話にもできるだろう。それどころか、ひょっとしたらひょっとするかもしれない。

「…今度はドタキャンしないだろうな」

「するわけないっしょ〜、勘弁してよ〜笑」

 

一番の問題は、果たしてりっちゃんが来てくれるのかということ。しかしそこは、さすがの友人。うまく話してくれたのだろう、2年越しのダブルデートはあっさりと実現した。と思いきや、当日、りっちゃんの友達がドタキャンしたらしい。結局、りっちゃん、友人、僕の三人で、夏祭りに臨むことになった。今思えば、元々その予定なのかもしれなかった。

当日、りっちゃんはまたしても、浴衣で現れた。2年前よりもさらに色っぽかった。瞬間、僕の脳裏にあの苦い記憶が蘇った。この日は雨こそ降らなかったが、再び降臨した天使を前に、薄皮一枚の自信は瞬時に剥がれ落ち、僕はまた、沈黙のボンクラに戻ってしまった。

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Rina Hashimoto : jpics (reddit.com)

(画像はイメージです)

それには構わず、友人はりっちゃんと楽しそうに盛り上がっていた。成長していたのは僕だけじゃなかった。

花火をぼーっと眺めながら、馬鹿な僕はさすがに気づいた。なぜりっちゃんが夏祭りに来てくれたのか。それは、友人がいたからだった。2年前も、多分僕に気を遣ってくれたのだろう。

「欲しいものを得るには、他人に甘えず、自力で頑張らないといけない」。2年前に得た教訓を、僕は生かせなかった。

 

ほどなく、友人とりっちゃんが付き合い始めたという噂を聞いた。僕から友人に聞くことはできなかったし、友人も僕に何も言わなかった。りっちゃんの話は、僕達の中で暗黙のタブーとなった。しかしその後すぐ、友人とりっちゃんは別れたらしい。詳細は知らないし、知りたくもなかった。

悔しさや嫉妬以上に、自分が不甲斐なかった。僕は2回もチャンスを貰いながら、ものにできなかった。友人は、たった一度のチャンスをものにした。その差は大きかった。

友人よ。あのりっちゃんを落とすなんて、すごい男だよお前は。完敗だよ。おめでとう。心の中で、そう思うしかなかった。

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手越祐也、人生初の始球式挑戦をファンに報告!投球に注目集まる「おめでとう」「楽しみ」 (coconutsjapan.com)

(画像はイメージです)

男の嫉妬はみっともない。悔しさは嚙み殺して成長の糧とする。数学と短距離走が得意だった彼を打ち負かし、ひそかに一矢を報いたつもりだったが、何の意味もなかった。とはいえすぐに、友人とはもちろん、りっちゃんとも、普通に話せるようになっていった。

 

高3の夏だったか。何の用事かは忘れたけど、僕はりっちゃんに、電話をかけた。珍しく話が弾んだ(思い込みだったかもしれない)。そこで僕は思い切って、ずっと心に引っかかっていたことを伝えた。

中3の夏祭りのときは、ごめんなさい。僕はりっちゃんのことが好きでした。これからも、嫌いになることはないと思う。もしよければ、これからも友達でいてくれると嬉しいです。

「ありがとう」りっちゃんはそう言ってくれた。本当はドン引きしてたかもしれないけど。僕は、勝手にすっきりしていた。程なく、何であんなことを言ってしまったんだと、物凄い羞恥心に悶えた。

 

それから一か月後の、最後の体育祭。りっちゃんは「記念に、写真撮ろうよ」と言い、僕とツーショット写真を撮ってくれた。りっちゃんがどういう気持ちだったのかは分からない。勿論嬉しかった。写真を眺め鼻の下を伸ばしつつ、勉強を頑張ろうと思えた。

 

ついに高校生活ともお別れ。僕は受験に失敗し、浪人生になった。

例の友人は無事、大学生になった。りっちゃんは、浪人することになったらしい。

卒業後まもなく、別の友人たちの集まりで、ボーリングをした。メンバーのほとんどはまもなく大学生。浪人するのは僕とりっちゃんだけだった。憧れのりっちゃんを目の前にしても、以前のように僕は緊張も高揚もしなかった。その時はどん底だった。

ふと視線を感じ、顔を上げると、りっちゃんがじっと僕を見ていた。目が合うと、彼女ははっと慌てて目をそらした。初めて見る表情だった。それ以上、何かを話すこともなかった。

 

浪人生活が始まった。りっちゃんとは予備校が違ったし、連絡もしなかった。大体それどころではなかった。受験後発症した抑うつ病と、勉強との闘い。辛くみじめな日々で、僕の心は折れていた。中3のあの夏、雨に折られたツンツンヘアーのように。高校時代の友達たちとも、極力連絡は取らないようにしていた。

 

そんなある夏の日。「女の子からやで」とニヤニヤ笑いながら、オカンがハガキを渡してきた。慌てて奪い取ると、差出人は、りっちゃんだった。僕は驚いた。りっちゃんから郵便物をもらうのは、初めてだった。

ハガキの裏には、りっちゃんの可愛く力強い字で、当時流行っていたKinKi Kidsの「フラワー」の歌詞が、ハガキいっぱいに書かれていた。

僕らは 愛の花咲かそうよ

苦しいことばっかりじゃないから

こんなにがんばっている君がいる

かなわない夢はないんだ

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「フラワー/KinKi Kids」○○のCM曲!夏の定番曲の歌詞とコードも徹底解説♪ - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)

目の奥が、カーッと熱くなった。なんとか平静を取り戻し、考えた。りっちゃんは一体どういうつもりで、このハガキを送ってくれたのだろう。

浪人生活が辛く、同じ仲間が欲しかったのか。

この素晴らしい歌詞を、同じ浪人生の僕と共有したかったのか。

夏になり、あの惨劇を思い出してしまったのか。

それとも、大学生になった例の友人に抱かれながら、「アイツ励ましてやってよ〜w」とでも言われたのかな。

ひょっとすると、これはりっちゃんなりの、僕への愛の告白かもね。だって愛の花って書いてるし。

ただの暑中見舞いだったのかもしれない。

真相は、分からなかった。

 

でも、理由なんてどうでもよかった。りっちゃんが、僕なんかのことを思い出してくれた。僕のために、ポジティブな言葉をくれた。それだけで、涙が出るほど嬉しかった。抑うつ病も一瞬吹き飛んだ。

りっちゃんにありがとうを伝えたい。一言でいいから電話したい。一目でいいから会いたい。

ハガキありがとう、もしよかったら久々にお茶でも…今ならそう簡単に誘えるだろう。でも当時は、できなかった。

携帯はおろかポケベルすら持っていなかった当時。家の黒電話から、公衆電話から、何度かりっちゃん家に電話をかけようとした。でも、ダイヤルを回す指は、途中で止まった。

りっちゃんのことだから、きっと予備校でもモテモテで、彼氏がいるかもしれない。これ以上迷惑をかけて、恥の上塗りをするわけにはいかない。

何より、りっちゃんに合わせる顔がなかった。みっともない自分を見せられなかった。まして、抑うつ病だなんて、当時は口が裂けても言えなかった。

せめてものお礼ということで、たしか手紙を書いた気がするが、記憶が曖昧だ。以降、連絡はなかった。

 

連絡を取る代わりに、僕は、そのハガキを、御守りにすることにした。栞代わりに参考書にこっそり挟み、辛いときにそのハガキを読み返したこともあった。りっちゃんの文字とフラワーの歌詞を、何度も読み、脳裏に焼き付かせた。

あのハガキのおかげで、辛い浪人生活を乗り切れた。そう言っても、過言ではない。本当に、感謝しています。

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富澤たけしはかっこいいイケメン!嫁は?天才?病気は?卒アルの画像あり (planetpixmedia.com)

(画像はイメージです)

その後りっちゃんとは、大学時代、一度だけ再会したことがある。

高校時代の仲間10人ほどで、旅行に行ったとき。メンバーにりっちゃんがいた。例の友人はいなかった。

大人になったりっちゃんは、浴衣じゃなく、おしゃれなコートを纏い、さらに綺麗になっていた。パジャマ姿のりっちゃんの無防備な谷間にもひそかに悶絶した。(画像は自粛します)人懐っこい笑顔は変わっていなかった。話せはしたけど、やっぱり緊張した。いくつになっても、人間は簡単には変われないものだと思った。

 

それからりっちゃんには、一度も会っていない。今どこで何をしているのかも分からない。当時の地元の夏祭りも、今はもう無くなってしまった。

だけどきっとどこかで、幸せに暮らしているのだろう。そうであってほしいと願う。いつかもし万が一、再会できることがあれば、あのハガキのお礼を言いたい。あわよくば真意を聞いてみたい。りっちゃんはもう覚えていないかもしれないけれども。

 

そういや後日、あの友人の結婚式に招待された。友人とは大学は違ったけど、バイト先が同じで、麻雀や合コンをしたりと、不思議な縁があった。大学時代に知り合ったという奥さんが、りっちゃんにとても似てて、思わず笑ってしまった。人間ってやっぱり、変わらないんだな。あれ以来、彼とも会っていないな。

でも、もし再会したら、彼とは楽しいお酒が飲める気がする。同じ女性を好きになった強敵(とも)だからね。

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橋本梨菜さん撮影会(2)(0712) | よっしーめがねのPhotoBooks (ameblo.jp)

~完~

キャスト(敬称略)

りっちゃん 橋本梨菜

友人    手越祐也

オカン   和田アキ子

僕     富澤たけし

主題歌

フラワー (Kinki Kids)

勝手に出演させてしまった皆様、申し訳ございません。全米は泣かずとも僕は泣ける。そんな話を自分が読みたくて、書きました。そんな駄文を最後まで読んで頂いた貴方、ありがとうございます。