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ぞうブロ~ぞうべいのたわごと

妄想を武器に現実と闘う、不惑のエンジニアのブログ

同僚マッスル氏、ただ今人間耐久試験中

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昨日、全然眠れなかったことを、同僚のマッスル氏に話す機会があった。

彼はいつも通り、笑顔でさらっと言った。

「大丈夫です!寝る前、ほんの20キロほど走れば、寝れますよ」

ああ、まともな人間に相談しなかった僕が悪いな。僕は苦笑した。

 

ところでマッスル氏って一体何者なの。このブログでもたまに登場頂いているし、ブログのネタも無いので、マッスル氏について、語ってみることにしよう。

 

同僚マッスル氏は、僕の数歳先輩の筋肉モリモリおじさん。僕の後に同じチームに転職してきた、ロマサガ RSのティルピッツ似の爽やかイケおじ。フットサルやマラソンを一緒にし、席が隣なこともあって、仲良くなった。 

(参考)ティルピッツ

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彼はとにかくタフ。身体的にも精神的にも、無類のタフネスを誇る。

家は会社から遠いはずなのに、誰よりも早く来て、誰よりも遅く帰る。なのに毎日15キロのランニングを欠かさない。

深夜残業の後、「ちょっと走ってみました、スッキリしました」と30キロのランニング記録を送られてきた時は戦慄した。

彼にとって在宅勤務とは、「24時間仕事ができるボーナス日」でしかない。

休日出勤も当たり前。いつも通り、朝8時から夜の21時まで仕事をし、そのまま夜のフットサル大会に合流。0時までプレイしたのち、仲間たちとラーメン二杯をすする。そして翌朝、息子のサッカーの試合に出かける。

夏になると、暑いという理由で、突然坊主にし周囲を驚かせる。奥さんや娘さんからは不評のようだ。

 

そんな彼の通り名は「人間耐久試験中」。彼が壊れる前に試験装置が疲労破壊するのは間違いない。こんなご時世だが、「39℃は僕にとっては微熱です」と言って憚らない。

ある時、定年延長のニュースの話をしてて、辛いですよね〜と言うと、彼は笑って返した。

「僕の目標は98歳まで働くことです」

彼にとって、定年とは、会社に決められるものではなく、自分が決めるものだった。たとえ目が見えなくなっても、心と筋肉の目で、図面を描いているのだろう。

自分を認めて欲しいと言うわけでも無い。人に押し付けるわけでもない。ただ、設計の仕事をしているのが楽しいらしい。弱音も愚痴も言わない。僕の弱音、愚痴をいつも聞き、ポジティブに変換してくれる。あまりの馬力に、上司のキラーマシンも現場のDQNも、一目置き、三歩引いている。

とにかく、人外なのだ。

 

実は彼にマラソンをすすめたのは、他でも無い、僕である。

友達とエントリーしたマラソン大会が迫ってたので、僕は毎日5キロ、多い時で10キロ走っていた。マラソンの自己ベストが5時間20分代の豚のくせに、僕はプチ自慢がてらマッスル氏に話してしまった。今思い返すだけでも恥ずかしい。

 

彼は目を輝かせ、僕の使ってたアプリを使い始め、「健康診断前なので、ダイエットがてら」ジョギングをはじめた。

当時から、彼は筋肉ムキムキ。大胸筋はパンパン、いい雄っぱい。これ以上どこを絞るんだと言う心配をよそに、彼は毎日走るようになった。

 

そして彼はあっという間に、紹介した僕を軽々と追い抜いていった、毎日15キロ、時には30キロ、マラソン大会前には45キロ走る。そんな変態になってしまった。フルマラソンのベストは、3時間半にまで伸びた。

あるハーフマラソンの大会の最中、彼は足を肉離れした。直前の練習しすぎが原因だったらしい。しかし、あろうことか彼は、そのまま完走した。しかも1時間40分台と、僕のベストタイムより速かった。

僕も肉離れの経験があるが、まともに歩くことさえできなかった。痛くなかったんですかと聞くと、彼は笑顔で答えた。「まあ、あと5キロくらいでしたしね」

そして、「鍛え方が足りなかった」と間違った原因分析をし、さらに苛烈な練習を自らに課すことになった。

 

だいぶ仲良くなってから、彼のルーツを聞いたことがある。

大阪に生を受けたマッスル氏は、幼少よりサッカーを始め、スパルタ教育のおかげで、小学生時代には大阪府のベストイレブンにもなったそう。あの稲本選手ともやり合い、当時は勝ってたらしい。

しかし、高校で足を怪我して、サッカー選手への道は断たれた。地元の友達とつるみ、ちょこっと「ヤンチャな」時期もあったらしい。

当時の写真を見せてもらったことがあるが、今話題のブレイキングダウンに出演してそうな、絶対関わったらアカン風貌をしていた。

 

その後、大学で機械工学を学び、自動車用プラスチック製品の会社に就職。

あちこち転職し、僕が今の会社に転職してから二年後、彼も転職してきた。

当時、フットサルのチームを立ち上げていた僕は、彼を誘った。ちょっとサッカーやってたんですと控えめに言っていたので。

しかし、チームの誰よりもずば抜けた能力、キーパーを吹き飛ばさんばかりのロベカルばりの弾丸シュートで、我がチームは超大型補強に成功。困ったらとりあえずマッスルにボールを回せ作戦でチームは快進撃。何回かフットサル、飲み会をし、仲良くなったというわけだ。

 

そんな超人鉄人変人の彼にも、弱点があった。内臓だ。

一度、明らかな過労が原因で、彼は十二指腸を壊し、入院した。筋肉やメンタルは鍛えられても、内臓までは鍛えられなかったんだな。彼も人間だったんだな。僕たちはむしろ安堵した。

しかし、入院中も在宅勤務をこなし、手術当日ですらメールがドンドン送られてくる始末。挙句、通常の半分の期間で退院し、まるで何事もなかったかのように、いつものハードな日常に戻ってしまった。

やはり彼は、人外だったね。僕たちはそう再認識した。

 

今でもマッスル氏とは同じ仕事をしている。こんな化け物だけど、とても気持ちよく仕事ができる、貴重な仲間。何度彼に助けられたか分からない。彼の100分の1でいいから、タフにならないとな。僕も頑張ろうと思います。