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ぞうブロ~ぞうべいのたわごと

妄想を武器に現実と闘う、不惑のエンジニアのブログ

がんにも負けず、会社にも負けず

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乳がんの最終結果が出る直前の週末。少し外出したいと言った嫁さんが、自慢の長髪をバッサリ切ってきた。突然なので驚いたが、理解した。

もうすぐ抗がん剤治療がはじまり、髪が抜けてしまうから。

僕はどちらかというとショートが好きだったけど、ショートは似合わないから嫌だと、独身時代も、子供が産まれても、頑なにロングを通してきた嫁さん。はじめてみるショート姿。

「もう、何もかもどうでもよくなった」そうこぼす嫁さん。

「ショート似合ってるやん!ショート好きだから嬉しいよ」

お世辞でも慰めでもなく、本心を伝えた。

でも、「今は慰めに聞こえるから何も言わないで」

そうこぼす嫁さんに、言葉が見つからなかった。

 

翌日、小包が届いた。嫁さん何か買ったのかな。

それは、ウィッグだった。今は、安くておしゃれなウィッグや、いわゆる「ザビエル帽」がたくさんあるみたい。クリエイターの方には感謝しかない。

ウィッグを子供たちにかぶせて笑っている嫁さんを見て、少しポジティブになれたのかなと安堵した。

 

それから数日。いよいよ、乳がんの最終結果発表の日。

一番おそれていた、HER2は、陰性だった。これが陽性だと、抗がん剤の種類も期間も、倍になっていた。ほっとした。

とはいえ、医師の診断(推奨する治療)は、

・抗がん剤治療 6カ月(アントラサイクリン+タキサン。3週間に1回、計8回)

・ホルモン治療 10年(タモキシフェン)

だった。

覚悟はしていたが、ステージⅡaであること、リンパへの転移があったことから、抗がん剤は避けられない模様だ。

ただし、念のため、オンコタイプ検査(抗がん剤ががんの再発率にどれだけ効果があるかを調べるもの)を受けることにした。保険適用ということもあり。

今後のスケジュールが、だいたい決まった。

4月 ホルモン治療

5月~11月 抗がん剤治療

12月~残り9年11カ月 ホルモン治療

辛く長い道のりになるだろう。しかし、がん細胞を根絶するため、再発させないようにするため、どうしても越えなければならない、いばらの道だ。本人はもちろん、家族みんな乗り越えるしかない。

 

そういえば、タモキシフェンという言葉に、僕は個人的に覚えがあった。大学の研究室時代、先輩がタモキシフェンの全合成を行っていたからだ。「この新規クロスカップリングを使えば、多置換オレフィンを選択的に合成できます。この反応は、タモキシフェンなどの医薬品の開発生産に応用が期待され…」そんな言葉を何度も聞いていた。

当時は観るのも嫌だった構造式。数十年たち、まさかそれが嫁さんの命を救うことになるなど、当時は想像もできなかった。苦しかったあの研究は、役になってたんだなと感慨深かった。

タモキシフェン - Wikipedia

嫁さんの治療が本格的に始まるのに合わせたように、4月から会社でフレックス制度が制定された。まさに、渡りに船。神風だ。早速申請。フレックスで、子供たちの送迎、嫁さんの体調不良に対応していく。

しかし正直、上司キラーマシンの理解は及んでいない。キラマは朝礼原理主義者。フレックスでも朝礼はやめない模様。フレックスを希望する者は皆の前で挙手し理由を言わされる。フレックスで子供の送迎をしてから出勤する場合は、朝礼に出られない。結果、浮く。当たりがキツくなり、嫌味を言われることもある。仕事量は変わらないどころか、むしろ増える一方。誰も分かってくれないと、悲しくなる。そもそも期待はしてなかったけどね。

新制度ができても、うちの部署は例外。何度そう言われただろう。在宅勤務も、社内副業制度も、そしてフレックスも。外向きアピールするための形だけの制度なんて、無い方がましだ。設計の部署だけ制度が使えないなら、いっそのこと設計の仕事なんてやめたい。仕事はしんどいし、責任だけあるし、損なことしかない。やりがい搾取はごめんだ。プライドなんてない。出世も昇進もいらない。他の間接部門に異動したい。世の中のため人のため、そんな素晴らしい綺麗事を掲げてる暇があったら、少しくらい助けて欲しい。

でも、愚痴ってばかりはいられない。異動なんて簡単にできないし、仕事も当分減らない。会社は自分や家族を守ってくれるわけではない。家族、自分自身は、自分しか守れない。何を言われてもされても、なんとかメンタルコントロールして、耐えて耐えて、乗り切っていく以外にない。文句を言われてもフレックスはさせてもらえているのだから・・・

 

だいぶ自分の愚痴に話がそれてしまった。申し訳ありません。

長男の小学校入学式、次男の幼稚園進級式を無事見届けた週末。

昨日の朝から、いよいよホルモン治療がスタート。例のタモキシフェンを飲み始めた。今のところ副作用は出ていない。

5月からスタートする抗がん剤が、一番の山だろう。抗がん剤に先立ち、ポートという安全に抗がん剤を注射するものを体内に埋め込む手術があることを初めて知った。もし抗がん剤が皮膚や脂肪に付着すると、組織を壊す(腐らせる)からだそうだ。ただ注射するだけじゃないのか。抗がん剤はそれほど強く恐ろしいのか。

しかしビビっても仕方ない。お医者さんを信じて、一歩一歩進むしかない。嫁さんのために、子供たちのために、自分自身のために。

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話がまとまってなくて恐縮です。近況報告でした。愚痴はいけませんね。みんなで力を合わせて、嫁さんに寄り添って、この苦境を乗り越えていきたいと思います。