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ぞうブロ~ぞうべいのたわごと

妄想を武器に現実と闘う、不惑のエンジニアのブログ

嫁さんがん記録2 見えてきた手術内容、スケジュール、そして新たなリスク

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嫁さんの乳がん確定から1週間。今日は会社を休み、嫁さんと一緒にセカンドオピニオンの病院に行ってきた。

ここ1週間、嫁さんの落ち込みようは激しかった。見たことがないほどに。無理もない。わずか5ヶ月前のN-NOSE(乳がん簡易検査)では陰性、しかも一番安心なA判定だったのだから。それが突然乳がんで胸を切除だなんて。

頑張ろう。頑張って。大丈夫。いける。何とかなる。そういう類の言葉は全て今の嫁さんには禁句。ただ寄り添うしかできない僕の疲労も蓄積。

加えて待ったなしの子育て。止まない仕事。こんなシャレにならないこと、リアル知り合いにはまず言えない。コロナを子供にうつされましたーうちの一家は世界で一番大変です助けて下さいー、そう呑気に嘆く会社のお喋り同僚が恨めしい。唯一この件を話した親に至っては、息子の嫁の癌よりも娘(馬鹿妹)の仮病と飼い犬が痩せたことを心配する始末。そのくせ滅入っている嫁さんに鬼電し、僕には嫁のことではなく妹と犬の話題のLINE。頼りになるどころか煽られてる有様。嫁さんの親にもおいそれと頼れない。

頼れる人なんていない。自分たちで何とかしなければ。でも今日また悪い知らせがあるとどうしよう。曇天の寒波の朝、疲労と不安の中、僕達は電車でクリニックに向かった。

 

大阪の都心にあるそのクリニックには、乳がん治療、特に術後再建の権威の先生がいらっしゃる。通常、乳がんで胸を全摘出した場合、そのまま何もなくなるか、背中の筋肉とお腹の脂肪を胸のあった場所に移植するかの二択。前者は文字通り胸がなくなる。後者も大きな傷が残り、とても痛々しい見た目になってしまう。がんの切除は当然としても、少しでも綺麗に胸を再建したい。それが受診の目的だった。

 

綺麗なクリニック。噂の高名な先生との面談。これまでの検査結果を見てもらう。僕も呼ばれ、二人で話を聞く。開口一番、先生は仰った。

「結論を言うと、あなたの胸は綺麗に再建できると思います。」

手術内容はこうだ。がんのある問題の左胸は、皮膚を残し、中の肉をごっそりくり抜き、シリコンを入れる。しかしがんが乳頭のほぼ直下にあるため、一部皮膚、そして乳首はなくなってしまう。傷も多少残る。だけど乳首の再建も、完全ではないけど、反対側の胸の乳首の半分を移植するか、3Dペイント的な技術である程度綺麗にできることのこと。この手術を日本に導入し保険適用が効くように尽力してくれたのが、目の前の先生だそうだ。

そうすることで左右の胸の大きさが変わるため、反対の胸にも少しだけシリコンを入れ大きさを整える。こちらはいわば普通の豊胸手術になるので保険適用外。高額を覚悟していたが、豊胸分は50万円少し。助かった。これで嫁さんの気持ちが保たれるなら、迷わずGOだ。

面談を重ねたのち、嫁さんはこのクリニックでお世話になることを決めた。

一つ新たな懸念は、摘出したがん細胞の精密検査結果によっては、抗がん剤での化学治療が必要になる可能性があるということ。抗がん剤を使えば、髪の毛が全て抜け落ちる。命、胸の再建の次に嫁さんが恐れていたことだ。抗がん剤を使うことになれば、誰とも会わない。外にも出ないと言っていた。それはそうだろう。胸と髪を失うことが女性にとってどれほど辛いことか、男の自分には想像もできない。だから僕からは口が裂けても言えなかったことだ。

しかし、少しキャラの強い先生たちは、そういうリスクも含め、とても丁寧に真摯に、説明をしてくれた。ここなら安心だ。ここが出来ないなら仕方ない。そう思えた。

さらに、心強い出会いが他にもあった。そのクリニックで同じがんを治療した、現在治療中の患者さん達のネットワークだ。そのネットワークに嫁さんも入り、実際に術後の胸を見せてもらったり触らせてもらったりしたそうだ。術後の痛みなどいろんなリアルな体験談も聞けたそう。シリコンを入れた胸でも体温の温かみが感じられて安心したと言っていた。

 

そんなこんなで、午前入りしたクリニックを出たのは16時。もちろん疲れた。午前中、今にも雨が降りそうだった灰色の空は、病院を出た時、すっかり晴れ渡っていた。大阪の大都会が少し明るく見えたのは、そのせいだけではなかった。嫁さんと僕にとって、大きく前進した一日だった。嫁さんは少し晴れやかな顔で僕の手を握り、ありがとうと言った。そして小走りで駅に向かった。家に帰り、これから子供達のお迎えが待っている。晩飯は子供達と約束したサイゼリヤだ。

 

ということで、今後のスケジュールは決まった。手術は2月中旬に決定。術後は翌日退院。とはいえチューブが胸に刺さったままで取れるのに数日かかるので、それまではホテルに泊まってもらうことに。手術当日と術後数日は会社を休む調整をしよう。

術後一か月で、色々な精密検査が終わり、いよいよ抗がん剤の治療をするかどうかが決まる。抗がん剤治療が必要な場合は、そこから3ヶ月ないし6ヶ月。その後ホルモン治療が5年〜10年。

長丁場の戦いになるけど、変わらずずっと寄り添っていく。そして乗り越える。

読んでくださりありがとうございました。