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ぞうブロ~ぞうべいのたわごと

妄想を武器に現実と闘う、不惑のエンジニアのブログ

会社の女子トイレに間違って入ってしまった。

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先週、午前8時。通勤バスの中で、僕は悶えていた。乗車直後に突如襲いかかってきた、猛烈な腹痛。思い当たるのは、今朝家を出る時ふいに食べた一粒のチョコ。子供の食べ残しを盗み食いした罪か、それとも普段のルーティンを破った罰か。原因はこの際、どうでもいい。大切なのは、いかにこの未曾有の危機を切り抜けるか。

 

陸の孤島の会社へ向かう、40分のノンストップバス。会社に着くまでは降りられない。変な吐息と脂汗が止まらない。まだか。まだ着かないのか。無限にも思える一瞬。何度も執拗に押し寄せるビッグウェーブ。バスの振動すら耐え難い。腰をくねらせ歯を食いしばる。この時点で何らかの法に抵触している可能性が極めて高い。

ようやくバスの扉が開いた。瞬間、僕は必死で走り出した。職場の6階までは到底持たない。そういや1階にも来客用トイレがあった。震える手でIDカードをセンサに叩きつけゲートを潜り抜ける。そのすぐ先には、夢にまで見た来客用トイレ。走ってる最中も容赦なく襲ってくるビッグウェーブ。全神経を尻に集中し、今にも決壊しそうな門を塞ぐ。しかしもう限界。敵の勢いはあまりに強大。次の波で決壊してしまうかも。今は周りも何も見えない。ただトイレしか見えない。

そしてようやく辿りついた約束の地。しかし油断禁物。緩めるな便座に座るまで気持ちと尻。トイレはあいにく掃除中。だが使えそう。掃除のおばちゃんには目もくれず、まるで新幹線のトイレで「コッ!」と吸い込まれるあれのように、個室に飛び込んだ。

地獄からの解放。至福のひと時。無事漏らさずに済んだ。思わず絶頂の吐息が漏れる。

気分爽快。さあ今日も頑張ろう。そう思ってドアを開けると、そこには掃除のおばちゃんが二人、怪訝な顔で僕を見つめてきた。そして言った。

「すみませんここ、女性トイレなんですけど」

冷静に見渡すと、いつもの小のアレがない。

「す、すみません!間違えましたっ!」

僕は平謝りし、脱兎のごとく逃走。何て事をしてしまったんだ。危うく性犯罪者になるとこだった。いやもう既になってしまったかもしれない。

しかし幸いにも、他に人はいなかった。バレずに済んだ。僕は必死で気持ちを切り替え、何食わぬ顔で職場に到着した。いつも通り、仕事との悪戦苦闘が始まった。その中で、僕は今朝の大事件を忘れかけていた。

昼前、僕の会社携帯が鳴った。見知らぬ内線だ。

「もしもし、ぞうべいさんですか。○○部(会社の総務管理部門)の××です」

嫌な予感がした。

「つかぬことをお聞きしますが、今朝、1階のトイレを使われましたか?」

一瞬で背筋が凍った。間違いない。あの事件がバレた。

「はい…もしかして…」

「そうです。今朝、通報がありまして。なぜ女性トイレに?」

「申し訳ありません!急いでて見間違えてしまいました…しかしなぜ私と分かったのですか?」

「監視カメラとIDゲートのログ時間を照合し、貴方を特定しました。」

…。

「見間違いということで、間違いないですね?」

いえ。実は僕、心は女性なんです。

そんな笑えないボケをかます余裕などなかった。

凄いなうちの会社のセキュリティ。こんなに凄いセキュリティを持ってるのに、なんで駐車場やロッカーの数が計算できないんだ。なんで毎日馬鹿みたいな慣例行事を呑気にやってるんだ。

そんな思いを全て飲み込み、僕はしおらしく言った。

「…はい…申し訳ありません…もう本当に漏れそうで、周りを見る余裕もなくて、間違えてしまいました」

「以後気を付けてくださいね。お腹が緩い方は早めの出勤をおすすめします」

そもそもバスの便がないんだよ。途中下車できないし。車通勤できるみんなとは違うんだよ。あんたらが作った駐車場の数が足りなくて抽選で落ちたからね。

何より、性への配慮か何か分からないけど、男女のマークがとても識別しにくいんだよ。

そう物申す気力は、もはやなかった…

 

そして今日。満員バスで40分立ちっぱなしは、相変わらず辛い。でも先週の地獄に比べれば。片足つま先立ちでも余裕綽々天国だ。

皆様も突然の腹痛にはお気をつけ下さい。万が一腹痛に襲われても、殿方は女子トイレに入られませんように。多分捕まります。こんなご時世だけど。いやこんなご時世だからこそ。