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ぞうブロ~ぞうべいのたわごと

妄想を武器に現実と闘う、不惑のエンジニアのブログ

京都夜桜妄想譚 其の壱 さやかと高瀬川

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単調な毎日。このご時世、娯楽もない。

なので、ひとつ妄想記事でも書いてみよう。

キーワードは、「京都」「夜桜」「磯山さやか」です。全部私の好きなものです。

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https://news.livedoor.com/lite/article_detail/18376936/

 

 

「京都に行くから、会わない?」

突然の君からの連絡。正直、驚いた。

何かあったのかな。分からないし、聞くつもりもない。

僕を思い出してくれたことが、嬉しかった。

 

このご時世、今年の春は、いつもと違う。

でも桜は変わらず、綺麗に咲き誇る。

久々にやってきた京都。

鴨川の桜も、あの頃と全然変わらないな。

でも、少し切なく見えるのは、なぜなんだろう。

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鴨川 桜 (imamiya.jp)

 

京都駅の八条口で待ち合わせ。

時間通りにやってきた君は、屈託ない笑顔を浮かべた。

君もまた、何も変わってないね。

 

学生時代、とあるサークルで、僕たちは出会った。

お似合いだなんて周りに言われ、お互い意識しつつも、すれ違いを繰り返す。

若くほろ苦いあの日々。

卒業後、君は東京に、僕は大阪に行き、離れ離れに。

あれからもう、10年以上経つんだね。

 

何から話せばいいのだろう。

タクシー内での、ぎこちない会話。

「京阪三条で降ろしてください」

重い空気を振り払うように、僕は運転手さんに伝えた。

 

まずは、コーヒーでも飲もうか。

三条通のスタバ。あの頃よく行ったよね。

君はいつも、スターバックスラテ。

今も変わらないんだね。

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【スターバックス 京都三条大橋店】夏の風物詩・納涼床から鴨川が眺められる絶好のロケーション|NEOPOSI

 

スタバを出て、あてもなく河原町を散策する。

僕たちには、限られた時間しかない。

話したいこと、聞きたいことが、たくさんあった。

でもいざ会ってみると、言葉が出てこないんだよね。

 

先斗町のイタリアンで、久々の再会を祝し、ビールとワインで乾杯。

お酒が入り、堰を切ったように言葉が出てきた。

僕達は、長い空白期間を埋め合った。

 

思えば、先斗町でディナーなんて、当時は考えもしなかった。

僕達も大人になったんだね。

 

お互い、いろんなことがあったんだと知った。

「キミ、カッコよくなったじゃん」

君のその言葉だけで、僕はお腹いっぱいだった。

君こそ、あの頃以上に、素敵な女性になっていたよ。

 

店を出ると、外はもう暗くなっていた。

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【祇園】飲み歩くなら「先斗町」で決まり。京の夜の世界へ迷い込もう | NAVITIME Travel

 

先斗町を一本出ると、流れるのは高瀬川。

ここの夜桜は、とても綺麗だよね。

でも、夜桜を眺める君の横顔は、もっと綺麗だったよ。

正直に言うと、僕の目には、君しか映っていなかったんだ。

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高瀬川 桜 (imamiya.jp)

 

ほろ酔いで君と歩く木屋町通。

繁華街の喧騒も、僕達には聞こえない。

二人だけの時間が、ゆっくりと流れる。

 

ふと、君がふらついた。

少し飲み過ぎたのかな。

君はバランスを崩し、僕の胸元に倒れてきた。

咄嗟に僕は、君を抱きよせてしまった。

君は潤んだ瞳で、僕を見上げた。

 

永遠にも感じられた数秒間。

「ご…ごめんなさい、少し飲みすぎちゃったかも…」

「…ほ、本当だね。頬が赤いよ、さやか。あ、いや、さやかさん」

「…とにかく、ちょっと休もうか」

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磯山さやか いそちゃんねる - YouTube

 

僕は自然と、君の手を取った。

無言で数分歩き、鴨川沿いに、並んで座った。

近くでは、学生さんが楽しそうにはしゃいでいる。

ちょうど、追い出しコンパの季節。

賑やかな音楽も聞こえてくる。

 

あの頃と、何もかもが変わらない。

変わってしまったのは、僕、そして君。

学生集団の姿に、僕達は昔の自分を重ね合わせていた。

 

あれからどれだけの年月が流れただろう。

あの時こうしていれば。数え切れない後悔。

時の流れは残酷だけど、優しく傷を癒してくれる。

 

どれくらい時間が経っただろう。

もう、帰らなくちゃ。

もの悲しそうに、君は呟いた。

うん、そうだね。

楽しい時間は、あっという間だ。

 

「もう一軒だけ、どうかな」

「今日は、泊まっていかないかい」

その言葉をぐっと飲み込み、タクシーで京都駅に向かった。

君も僕も、今いるべき場所に、帰らないといけない。

それは、痛いほど分かっているから。

 

八条口で、僕は君を見送った。

「また逢えたらいいね。それまで元気でね」

僕が言うと、彼女は俯いた。

だけどすぐ笑顔に戻り、「今日は、ありがとう」と言った。

 

僕も君も、分かっていた。

僕たちはもはや、違う世界に生きているということを。

また逢う日は、もう来ないだろうということを。

 

僕は気づいた。なぜ桜が綺麗なのか。

限られた時間で美しく咲き、儚く潔く散ってしまう。

その姿に、いろんな人たちが、それぞれの想いを乗せるからなんだろう。

さっき見た桜には、僕と君の想いが詰まっていた。

だからあんなに綺麗で、切なかったんだね。

 

 

君に伝えたい。

ありがとう。そしてさようなら。

 

春は出会いと別れの季節。

京都で夜桜を見るたびに、君を思い出すのかな。

夜空を見上げると、目の前に京都タワーが鎮座していた。

 

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京都タワーの夜景 (京都府京都市下京区) -こよなく夜景を愛する人へ (yakei.jp)

 

惜しかったな。今回も。

そう笑いながら、京都の街が、あの頃と変わらず、優しく僕を包み込んでくれている。

ふと、そんな気がしたんだ。

 

 -完-

【キャスト】

君(さやか)  磯山 さやか

僕       ぞうべい

【主題歌】

さくら (ケツメイシ)

【原作・脚本・執筆・妄想】

ぞうべい

 

我ながら実に気持ち悪い。磯山さやかさん、申し訳ございません。

でもこんなデートに憧れる40の夜。

妄想は究極の現実逃避ですよね。

そうだ、京都いこう。