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ぞうブロ~ぞうべいのたわごと

妄想を武器に現実と闘う、不惑のエンジニアのブログ

パリで助けてくれた、エッフェル塔売りの彼に伝えたいこと。

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新婚旅行で、一つだけ心残りがあります。

フランスはパリ。ルーブル美術館近くの、チュイルリー公園。

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チュイルリー庭園パリ、フランスの彫刻. — ストック写真 © rglinsky #7512737 (depositphotos.com)

 

広く美しい公園では、観光客や市民が大勢くつろいでいた。

その中に、エッフェル塔のおもちゃを立ち売りしている黒人さんがちらほらいた。

パリに来るのは二回目だったので、彼らの存在は知っていた。

 

最初にパリのその場所を訪れたのは2012年。

ルーブル美術館に一人向かう途中、腰からぶら下げたエッフェル塔をかちゃかちゃ鳴らしながら、無表情でぶらぶら歩いてる彼らは、当時、少し怖かった。

正直、ヨーロッパにはまだまだ人種間の壁が残っているのかなと感じた。

 

あれから4年。今回違ったのは、仕事じゃなくハネムーンだったこと。パリ同時多発テロから間もない頃だったこと。

そして、彼ら以外に、シリアからの難民だと言う人達もいたことだ。

 

チュイルリー公園で、シリアから逃れてきたという中東風の女性二人組に、私達は声をかけられた。

内戦が終わり、平和が訪れるよう、この紙に署名をお願いします。

そう言われ、不思議に思いながらも、私は、紙切れに署名をした。署名が役に立つのならと。

「サンキュー」。彼女たちは投げキッスをした。そして彼女たちは続けた。

「この署名プラスお金を頂ければ、もっと嬉しいです」

「5ユーロか10ユーロ、私たちにお恵みください」

 

予想外の展開に驚きつつ、まあ5ユーロならと、ハネムーンで気の大きくなっていた私は、財布を取り出そうとした。

すると、近くでエッフェル塔を売っていた黒人の男性が、怖い顔で近寄ってきた。

そして叫んだ。

「pickpocket!!」

 

pickpocket。スリ。私達は、はっと目が覚めた。

彼女たちは、「なぜ余計なことをいうの」「邪魔しないで」とばかりに、恨めしげに彼を睨みつけた。

 

「ありがとう!メルシー!」

動揺が収まらないまま、私達は彼にお礼を言った。

彼は、何も言わず、見返りも求めず、無表情のまま、すっとそこを立ち去った。

 

彼女たちが本当にpickpocketだったのか。真実は分からない。

それでも彼には、今でも本当に感謝している。怖い人だなんて思っていて、申し訳なかった。

 

そのとき、彼のエッフェル塔を一つでも、買えばよかった。

たしか数ユーロ。少なくとも5ユーロよりは安かったはず。

それだけが、心残りだ。

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エッフェル塔 M GD 置物GH (オブジェ オーナメント パリ 置き物) - インテリア雑貨 | WUTTY & Co. (wutty-co.com)

当時も、一瞬買おうか迷った。

でも買ってあげようだなんて、それこそが傲慢な、相手を馬鹿にした発想にならないか。

そんな変な考えが頭をよぎった。

いやいや、そう考えること自体が、そもそも失礼だったんだ。

シンプルに、ありがとう、お土産に一つ頂きます。

それでよかったんじゃないのかと、今は思う。

 

あの時の彼は今、何をしているだろうか。

変わらずエッフェル塔を売っているのかな。それとも。

 

ふと、そんなことを思い出した。

コロナが収まり、またフランスに行く機会があれば。

今度こそは、チュイルリー公園の売り子さんから、エッフェル塔のおもちゃを買おうと思います。

自由に海外に行ける日が、早く来て欲しい。それまではジョーブログさんの旅動画で我慢です。