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ぞうブロ~ぞうべいのたわごと

妄想を武器に現実と闘う、不惑のエンジニアのブログ

京都夜桜妄想譚 其の弍 さやかと円山公園

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※本記事は、この「京都夜桜妄想譚」シリーズの続編です。要するに妄想です。

京都夜桜妄想譚 其の壱 さやかと高瀬川 - ぞうブロ~ぞうべいのたわごと (elep-peace.com) 

 

「京都に行くから、また、会わない?」

スマホが鳴り、僕は目を疑った。

君からのLINEだ。

僕たちはもう会わないだろう。

あの時、そう思ったのに。

 

「どうしたの?何かあったん?」

思わず訊くと、君は答えた。

「着物デート、しようよ」

 

今回は、祇園四条で待ち合わせ。

僕たちは早速、レンタル着物ショップに向かった。

 

京都で学生だった頃は、気恥ずかしくて着物デートなんてできなかった。

だけど、一度はしてみたかった。

その相手が、まさか君だなんてね。

 

先に僕の着替えが完了。 

ほどなく、着物姿の君が出てきた。

僕は思わず息を呑んだ。一瞬で目を奪われた。

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https://www.google.co.jp/amp/s/gamp.ameblo.jp/kimonoaki/entry-11744521457.html

 

僕が見とれていると、君は照れながら笑った。

「もー、何黙ってるの?可愛いよくらい言ってよ笑」

「お、おう、とても可愛いよ!」

「ンフフ、ありがとう。君の和装も、カッコいいよ」

 

着物姿の僕達は、祇園の街に繰り出した。

花見小路通りを歩き、円山公園に向かう。

君は案の定、観光客に大人気だった。

たくさん写真を撮られ、さながら即席撮影会だったね。

僕は、鼻が高かったよ。

 

円山公園のしだれ桜が、ちょうど満開だった。

円山公園は、あの頃、新歓コンパや花見で、何度も訪れたよね。

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当時、僕達は、サークルの花見場所の予約係だった。

朝からブルーシートの上で、色々話したっけ。

初めて二人で話したとは思えないくらい、とても自然で、楽しかったんだ。

 

あの時僕は、サークルのマドンナ、りょうこ先輩に無謀にも告白し、あえなく振られた直後だった。

なので花見は気が進まなかったけど、係なので、仕方なく来てたんだ。

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https://www.oricon.co.jp/news/2016729/full/

 

「えー!りょうこ先輩は、タクヤ先輩と付き合ってるんだよ!君無謀すぎるよー!」

そして君は、僕の肩をポンと叩き言った。

「まあしゃあない!今日はとことん飲もう!」

恥をかいて傷心の僕を、君の屈託ない笑顔が、優しく癒してくれたんだったよね。

 

あの頃と変わらず、今も綺麗に咲き誇る円山公園のしだれ桜。

その桜でさえ、今日の君の前では、引き立て役に甘んじていたね。

 

円山公園を抜け、ねねの道を歩く。

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ねねの道 | 京都・東山の観光ガイド (360navi.com)

着物姿の君は、歩きにくそうだ。

僕も君に合わせ、ゆっくり歩く。

 

普段の喧騒から解放され、ゆるやかな時間が流れる。

たまにはこうしてゆっくり歩くのも、悪くないね。

小さな歩幅で歩くおしとやかな君もまた、魅力的だった。

 

高台寺のしだれ桜が満開ですよ。

そんな客引きの声につられ、

僕達は高台寺への石段を登り始めた。

着物姿の君は、階段を登るのが辛そうだ。

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僕は無言で、君に手を差し出した。

君は無言で、僕の手を握り返した。

 

石段が無限に続けばいいのに。

そう思ったことは、ここだけの秘密だ。

 

高台寺の美しいしだれ桜。

茶室、庭園、竹林。

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隈なく歩き回り、少し疲れてきた。

「都路里で、抹茶パフェでも食べようか」

「懐かしー!いいね、そうしよう!」

 

サークルのみんなで、ちょくちょく行ってた都路里。

君は都路里パフェが大好き。僕は抹茶カステラパフェ派。

10数年ぶりに食べる都路里パフェは、当時のままだった。

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二人でパフェを食べるのは初めてだったね。

でも、パフェの甘みが、僕たちをあの頃に、一瞬でタイムスリップさせてくれた。

 

美味しそうに、都路里パフェを頬張る君。

口元に、抹茶が付いている。

思わず僕は、君の唇に、見入ってしまった。

 

「どうしたの?変な顔して。何かついてる?」

「あ、いや、抹茶が…」

「あ、ほんとだ。それにしても、美味しいね!」

「う、うん、美味しい!」

 

八坂神社に戻り、お詣り。

僕は手を合わせながら、目を閉じお願いをする君の横顔を、薄目の横目で見つめていた。

 

君は何を、お願いしてたんだろう。

僕の願い。それはね…

 

ダメだ。

言葉にしてしまうと、全てが壊れてしまいそうな気がする。

今を守るため、想いは胸の中に、しまっておかないといけないんだ。

 

着替えを終え、束の間の着物デートは幕を閉じた。

帰りぎわ、京都駅の八条口で、君は言った。

「今日は、ありがとう。とても楽しかったよ」

僕は勇気を振り絞って尋ねた。

「どうして、僕だったの?」

 

数秒間の沈黙。彼女はスマホに手をやった。

「…もう、行かなくちゃ。」

そして、続けた。

「また…会ってくれるよね」

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https://thetv.jp/person/1000002247/

 

僕は言った。

「も…もちろんだよ」

笑顔で去る彼女に手を振り、別れた。

 

その帰り。

僕は一人、四条大橋から、鴨川に座る等間隔の人影を眺めていた。

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ふと、胸が苦しくなった。

自分の気持ちが、もはや後戻りできないほど、大きくなっていることに気づいた。

君の目的は、一体何なんだい。

そして僕はまだ、この後訪れる運命の再会を、知る由もなかった…。

 

-完-

出演(敬称略)

君(さやか)     磯山さやか

僕          ぞうべい

りょうこ先輩  広末涼子

タクヤ先輩   木村拓哉

 

主題歌

桜坂 (福山雅治)

 

第3話に続く(怒られたら止めます)